「あの人は性格が良いから得をしている」?

「あの人は要領が良いから出世する」 「ずる賢く立ち回った者が、結局は得をしている気がする……」

閉鎖的な組織や、理不尽な人間関係の中にいると、そんな風に感じて心が折れそうになる瞬間はありませんか? しかし、都庁で28年間、人事・東京都議会対応・用地買収(立ち退き交渉)のマネジメントなど、組織の根幹から最もヘビーな最前線までを網羅し、数千人のキャリアを見てきた私の結論は違います。

変化の激しい現代において、誠実さや「性格の良さ」は単なる得不徳の話ではなく、どこに行っても通用する「最強のポータブルスキル(持ち運び可能な能力)」なのです。

今回は、なぜ「誠実さ」が仕事の成果やキャリアの成否を分けるのか、その裏側にある組織の力学を紐解きます。

1. 陰口やすり寄りが「低リターン」な投資である理由

職場で、特定の人をターゲットに陰口を叩く人。あるいは、楽なポジションを手に入れるために上司にだけ過剰にすり寄る人。 彼らは一見、器用に立ち回っているように見えるかもしれません。しかし、その戦略は極めて「ハイリスク・ローリターン」です。

なぜなら、現代の仕事(特に行政や複雑なビジネス)は、「情報の共有」と「相互信頼」なしには絶対に成立しないからです。

陰口を叩く人は、周囲から「自分もいつか裏切られる」と警戒され、自然と重要な情報やプロジェクトから遠ざけられます。上司へのすり寄りも、組織改編や人事異動一つでその基盤は一瞬で崩れ去ります。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)のデータ(※1)を見ても、若年正社員の離職状況や職場のトラブルの根底には「心理的安全性」やコミュニケーションの欠如があります。 負の感情や打算で周囲をコントロールしようとする人は、最終的に「誠実で、仕事ができる優秀な層」のネットワークから静かに排除されていくのです。

2. 誠実な人は「思考のノイズ」が圧倒的に少ない

私たちが考える「性格が良い(誠実である)」とは、単に優しいということではありません。 それは、他者への想像力があり、「今、組織やチーム全体のために何をすべきか」を私欲抜きに考えられる力、つまり高い視座のことです。

誠実な人は、他人の足を引っ張ることにリソースを割きません。

  • 陰口を言う労力を「課題解決」へ。
  • 誰かを蹴落とす戦略を「チームの成果」へ。

この思考のシンプルさが、結果として高いパフォーマンスを生みます。 都庁時代の過酷な立ち退き交渉の現場でも、最後に事態を動かしたのは、ずる賢いテクニックではなく「徹底的な誠実さと信頼関係」でした。周囲が「この人のためなら」と協力してくれる人間力こそが、一人では成し遂げられない大きな仕事を引き寄せるのです。

3. 「信頼の残高」が採用とキャリアの最終決定権を握る時代

私の直属の部下から、民間のトップランナーであるBIG4(コンサルティングファーム)へと転職し、現在は当社のキャリア戦略アドバイザーを務めるITAを見ていても、民間・行政を問わず共通する真理があります。

近年、採用やビジネスの現場では「リファラル(紹介)」や「アルムナイ(退職者)ネットワーク」が急拡大しています。ここで残酷な差が出ます。

性格が良い(誠実な)人は、新しい挑戦をしようとした際に「また一緒に働きたい」「彼なら間違いない」と声をかけてくれる仲間や味方が常に周囲にいます。一方で、不義理を重ねてきた人は、スキルの有無に関わらず、その強力なネットワークから漏れてしまいます。

「実務スキルは後から教えられるが、その人が持つ誠実さやマインドセットは変えられない」

これが、多くの採用担当者や組織のリーダーが口にする本音です。キャリアがうまくいかない人の多くは、スキルの不足ではなく、過去に積み上げてきた「信頼の残高」が足りないのです。

最後に:誠実さは「磨けるスキル」である

「性格」は生まれ持った資質だけではありません。 他者を尊重し、誠実に仕事に向き合おうと決める。その「意思決定」と行動の積み重ねです。

ずる賢く立ち回って手に入れる目先の小さな利益より、誠実さで積み上げる「信頼」という資産。 結局のところ、それが最も効率が良く、最も遠くまで行ける「最強の武器」になります。

「今の職場で、自分の誠実さが正当に評価されていない」 「潰しが効かないと言われる公務員から、民間でも通用する自分のポータブルスキルを言語化したい」

そう感じているなら、ぜひ一度私たちにお話を聞かせてください。組織のルールと個人のキャリア、その両方を知り尽くした私たちが、あなたの「信頼の残高」を次のステージの成果へと変えるお手伝いをします。

【出典元】

(※1) 独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT):若年者の初職における経験と 若年正社員の離職状況 ―第3回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査―

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