「元パラアスリートでした」――華やかな舞台の裏側で知った、「組織の壁」と「持ち運び可能な強み」の正体
最近、メディアでもパラスポーツの報道を目にする機会が増えました。躍動するアスリートたちの姿に、心を動かされている方も多いのではないでしょうか。
実は、私もかつて、その“当事者”の一人でした。
都庁で人事や都議会対応、用地買収(立ち退き交渉)のマネジメントを28年間務める傍ら、私は「パラテコンドーの選手」として、世界の舞台を目指して活動していました。しかし結果として、ケガによりその夢を諦めることになりました。
世界を目指す中で、私が直面したのは「才能や努力の不足」だけではありません。多くの障害者アスリート、そして現代のビジネスパーソンにも共通して立ちはだかる、あまりにも「厳しい組織と環境の現実」でした。
今回は、私が華やかな世界の裏側で経験した「資金と認知度の壁」、そしてそれをどう乗り越えて現在のキャリアに繋げたのか、リアルな舞台裏をお話しします。
1. 夢を追う代償。年間「300万円」の壁と組織の矛盾
国際的な舞台を目指すレベルになると、遠征費、用具代、トレーナーへの報酬などで、年間で最低300万円の活動資金が必要になります。もちろん生活費は別です。
この資金を確保するためには「働く環境」が必要ですが、ここに大きな矛盾が生じます。
いわゆる「障害者雇用」の枠の中で、週5日フルタイムで働きながら、世界レベルの「1日3部練習(朝・昼・夜)」をこなすのは物理的に不可能です。多くの選手が、仕事の都合で練習を断念したり、夢を追うために生活基盤を犠牲にする選択を迫られます。
幸いにも私は、活動に理解を示してくれる企業や、アスリートと企業を繋ぐために奔走する方々とお会いする機会に恵まれました。この時に培った「限られた環境の中で、いかに自分をバックアップしてくれる協力者(スポンサー)を巻き込むか」という泥臭い交渉の経験は、現在の私の大きな財産となっています。
2. 「認知度」という巨大な壁を、どう突破するか
努力や情熱は、健常者のトップアスリートと何ら変わりません。では、なぜこれほど資金面で苦戦するのか。その根源にあるのが「認知度(市場価値)」という壁です。
メディアで大々的に報じられるメジャー競技にはスポンサー企業が殺到しますが、知名度が低い競技は企業の目に留まりにくい。自分たちの価値を「知ってもらえない」ということが、アスリートの活動を直撃するのです。
これは、現代のビジネスパーソンも全く同じではないでしょうか。
「真面目に血のにじむような努力をして実績を出しているのに、組織の中で正当に評価されない、知ってもらえない」
私たちが必要としていたのは、かわいそうという「同情」ではなく、本気で成果を目指す努力に見合った「正当な評価」でした。そのため、私は後輩選手を企業に売り込むために自らアプローチし、雇用まで繋げる「営業・調整活動」も行いました。この「自分の価値を言語化し、相手のメリットに変えて提案する力」こそが、ビジネスで言うところのマーケティングだったのです。
3. 夢の終わり、そして「セカンドキャリア」への挑戦
私はケガにより、アスリートとしての大きな目標を諦めました。「もっとやれたのに」という悔しさは、今でも消えることはありません。
しかし、この過酷な経験と、都庁という巨大組織で数万人規模の人事やメンタルヘルス・休復職支援を行ってきた経験が、一つの確信へと繋がりました。
それは、「才能や情熱を持ちながら、環境や組織の仕組みのせいで、自分の価値を発揮できずに潰れていく人を減らしたい」ということです。
アスリートが現役を引退するとき、多くの人が「自分には競技しかやってこなかったから、社会で通用するスキルがない」と絶望します。しかし、それは大きな誤解です。厳しい環境を生き抜く中で身につけた「調整力」「タフな交渉力」「目標達成への執念」は、どこに行っても通用する最強の「ポータブルスキル(持ち運び可能な強み)」なのです。
「このままでいいのかな」と組織で迷う、すべての働くあなたへ
私たちは今、「ガバメントデザイン」として、働く大人のためのキャリア相談を行っています。
- 今の環境で自分の価値が正当に評価されていないと感じる方
- 「自分には大したスキルがない」と自信を失っている方
- 心身の限界を感じて、一度立ち止まりたい(休職・転職)と考えている方
アスリートの世界も、一般の会社組織も本質は同じです。あなたがこれまで組織のために、誰かのために尽くしてきたエネルギーを、今度は「自分自身の未来」のために使ってみませんか?


