「優しい人ほど事業を潰すと言われる理由」
福祉をボランティアで終わらせないための、冷徹で温かい経営戦略
「想い」だけでは、救えるはずの命も救えない
「優しい経営者ほど、事業を潰してしまう」――。
都庁28年のキャリアの中で、数々の行政データと地域の現場を見てきた私が、いま最も強く抱いている残酷な本音です。
福祉や対人支援の現場で、「目の前の人を救いたい」と身を削って活動されている方の思いやりは本当に尊いものです。しかし、現実は非情です。厚生労働省の調査を見ても、小規模な事業所ほどコスト増に苦しみ、赤字に転落している実態が浮き彫りになっています。
利益を度外視し、スタッフの「自己犠牲」という名のボランティアで成り立っている現場は少なくありません。しかし、その自己犠牲が限界を迎えたとき、地域から大切なセーフティネットが一つ消えてしまうのです。
成功の鍵は「ITによる時間創出」と「越境した外部連携」
一般的なビジネスであれば「利益が出ない事業は即撤退」というロジックで切り捨てられます。しかし、地域の「孤独と分断」を食い止めているのは、間違いなくこうした現場の皆さんです。
だからこそ、強い組織は「想い」だけでなく「持続可能な仕組み」を持ちます。そのための戦略は2つあります。
① ITツールは「人を守るため」に使う
福祉の現場で「効率化」や「DX」と言うと、冷たく聞こえるかもしれません。しかし、現実は逆です。
手書きの事務作業をタブレット端末へ移行し、月間10時間の事務作業を削減できたとしたら。その10時間は、利用者との対話や、スタッフの心の余裕へと還元されます。ITは、目の前の人と向き合う時間を死守するための「防衛策」なのです。
② 専門職と「連携が取れる可能性」を模索する
自社だけで苦しみをすべて抱え込まず、地域の他業種と繋がることで、新しい解決策が見えてきます。
例えば、地域のNPOが窓口となり、「行政書士」や「地元の工務店」とチームを組むような連携です。
- NPO: 日常の見守り訪問で、高齢者の住まいや生活の不安をキャッチする。
- 行政書士: 相続や後見制度、権利関係の整理など、専門的な法務をサポートする。
- 工務店: 防災の観点からの住宅修繕や、空き家管理のハード面を担う。
これまではバラバラだった専門職が「地域の困りごと」を軸に一つのチームとして機能すれば、それぞれの職能を活かした正当な報酬を伴う「事業」として、持続可能なセーフティネットを構築できるようになります。
あなたが倒れれば、救えるはずの人は救えない
思いやりだけで走り続けると、いつか必ず息切れします。あなた自身が燃え尽きてしまえば、その先にいる人たちは行き場を失ってしまいます。
明日からできる具体的な一歩として、まずは「自分たちだけでやらなくてもいい業務」を一つだけ見つけてみてください。
- 手書きの事務作業を、デジタルツールに置き換えてみる。
- 専門外の相談が来たら、地域の他業種へ繋ぐルートを考えてみる。
あなたの優しさを、どうか自己犠牲で終わらせないでください。
「長く続く温かい経営(サステナブル・デザイン)」こそが、孤独を減らし、巡り巡って多くの人の人生を救う最強の手段になるのです。
ガバメントデザインは、行政データと現場の声を繋ぎ、持続可能な地域社会の仕組みづくりを言葉と仕組みで支援します。この記事が、誰かを支えるあなたの「支え」になれば嬉しいです。
出典・参考データ
- 2024年度 特別養護老人ホームの経営状況について(厚生労働省) など

